ヨーグルトとビフィズス菌の基礎知識
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光岡知足(みつおか・ともたり)先生のプロファイル
ビフィズス菌などの腸内細菌研究の世界的な権威として同分野の樹立に尽力。「善玉菌」「悪玉菌」の名づけ親としても知られている。1930年、千葉県市川市生まれ。東京大学農学部農獣医学科卒業。同大学院博士課程修了。農学博士。'58年、理化学研究所に入所。ベルリン自由大学客員研究員、理化学研究所主任研究員、東京大学農学部教授、日本獣医畜産大学教授を経て、現在、東京大学名誉教授、理化学研究所名誉研究員、日本獣医生命科学大学名誉博士。日本農学賞、科学技術長官賞、日本学士院賞、メチニコフ賞などを受賞。趣味はクラシック音楽鑑賞とバイオリン演奏。大学在学中からバイオリン奏者として市川交響楽団にも在籍。著書は「腸内細菌の話」「健康長寿のための食生活」(以上、岩波書店)、「腸内菌の世界」(叢文社)、「人の健康は腸内細菌が決める!」(技術評論社)など多数。
ヨーグルトとビフィズス菌と腸内環境のことをやさしく、わかりやすくお話されています。
先生は「善玉菌」「悪玉菌」の命名者です。
第0回(2011/11/17配信) TOPインタビュー
第1回(2012/07/27配信) ヨーグルトってどこまで体にいいんでしょうか? 第1回
第2回(2012/08/12配信) ヨーグルトってどこまで体にいいんでしょうか? 第2回
第3回(2012/09/03配信) ヨーグルトってどこまで体にいいんでしょうか? 第3回
――赤ちゃんの時のように多くはないけれども、大人になってもビフィズス菌は一定の割合で棲息している。その割合によって腸の健康、ひいては全身の健康状態が左右されるわけですね。
光岡 そうです。個人差はありますが、おおよその目安として20%という数字が維持できれば、その人は生涯にわたって健康でいられるでしょう
光岡 菌とは共生することが大事なんです。
光岡 ヨーグルトを食べると確かに善玉菌は増えやすくなります。ただ、それは「生きた菌」が腸まで届くからではないんです。
――テレビのCMでは、そのことばっかり強調していますよ。
光岡 それは正しくはありません。生きた乳酸菌(ビフィズス菌)が腸まで届き、増殖するということは普通は無いのです。
――生きた菌であるかどうかは腸内フローラを改善する決め手とは言えないわけですね。
光岡 そうです。生きた菌であろうと死んだ菌であろうと、関係はありません。腸内に菌が運ばれると、その菌の体に含まれる成分(菌体成分)によって腸内に集まっている免疫細胞が刺激されます。その結果、免疫活性によって体全体のホメオスタシス(恒常性)が安定し、機能性が高まる効果が期待できるんです。
――うーん、そのお話で疑問が2つほど湧いてくるんですが……。まず、「生きた菌」ばかりが強調されてきたのはなぜなんですか?
光岡 それは、「生きた菌が腸まで届く」と言ったほうが、悪玉菌の増殖が抑えられるというイメージがあり、説得力があると考えられてきたからでしょう。国内外の研究者のなかにもそう信じている人が多いのですが、先ほどお話ししたように、学問的には正しくはないんです。
――実験して検証されているわけですよね。
光岡 そうです
――では、もう一つの疑問でもあるんですが……。
「死んだ菌でもいい」ということだと何か良いことはあるんでしょうか?
光岡 死んだ菌でもいいとなると、長期間発酵させた乳酸菌生成物を加熱処理して、錠剤などで摂ることもできるようになります。ヨーグルトが200mlで20億個程度の乳酸菌(ビフィズス菌)が摂取できるのに対して、乳酸菌生成物を製品として加工すれば、わずか数グラムで1〜2兆個の摂取が可能になります。
――製品というのはサプリメントのことですね。サプリメントと比べたら、ヨーグルトではずいぶん効率が悪いことがわかりますね。
光岡 最近の研究では、1日2兆個の大量摂取で潰瘍性大腸炎が改善されたという海外の報告例もあります。これだけの量の乳酸菌をヨーグルトで摂取しようとすると、ゆうにバケツ一杯分は必要になってしまいます。
光岡 まあ、私自身も30年以上実践していますが、加糖していない無脂肪タイプのヨーグルトを、毎日一定量いただくことは悪いことではありません。(ヨーグルトには脂肪成分が3%程度含まれているので、脂肪の取り過ぎに注意が必要、と先生は言っています。)
光岡 糖には様々な種類がありますが、オリゴ糖の良いところは腸内で善玉菌のエサになる性質があるということです。また、摂取しても人間の持っている消化酵素では消化されないため、腸から吸収されず、血糖値の急激な上昇が抑えられるという利点もあります。(糖の入っていないプレーンなヨーグルトが良い、甘みが欲しいならオリゴ糖をと先生は言っています。)
光岡 何をどれだけ食べればいいのか、まずおなか(腸)に聞くようにすること。便がどれだけ硬いか、臭いにおいがどれだけするかも、腸内フローラの状態を知る目安になります。
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